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機械式時計の精度について詳しく解説!精度に影響が生じる要因も

2023.02.24
修理・対策
機械式時計の精度について詳しく解説!精度に影響が生じる要因も

機械式時計はクォーツ式時計と違い、誤差が生じやすい構造になっています。また、誤差の範囲も使用する人の使い方や保管方法によって異なるのも特徴です。機械式時計を使用している方の中には、機械式時計の精度や時間が遅れる原因が気になる方も多いでしょう。

そこで今回は、機械式時計の精度や、精度に影響が生じる要因について解説します。記事内では機械式時計を長く使い続けるためのポイントについても触れているので、大切な時計を長く使い続けたい方はぜひ最後までご覧ください。

機械式時計の精度について

機械式時計は、電池や電子回路を使わない構造上、1日あたり数秒程度の誤差が出ます。なお、現在多く出回っている時計は電池によって動くクォーツ式時計です。そのため、ここからは機械式時計とクォーツ式時計の違いについて触れた上で、機械式時計の精度について解説します。

機械式時計とクォーツ式時計の精度の違い

腕時計には機械式時計とクォーツ式時計の2種類があり、両者の違いは時計を動かす仕組みです。機械式時計とクォーツ式時計は、動力源の違いによって精度に差が出ます。

機械式時計は、巻き上げられたゼンマイが元に戻るときの力で針を動かすため、新品でも1日に数秒程度の誤差が生じます。自動巻き式と手巻き式のどちらに関しても、時間のズレは完全に防げません。

クォーツ式時計は電池によって動くため、機械式時計よりも時間が正確です。しかし、大量生産されたクォーツ式時計のムーブメントは分解しづらい構造で作られています。劣化や故障によって時間が大きくズレても修理できず、長期保有には向かないタイプが多いです。

一般的に、機械式時計よりもクォーツ式時計のほうが時間の誤差は生じにくい傾向にあります。しかし、正しいメンテナンスを行いながら長期にわたって使用できるのは機械式時計です。

機械式時計の平均日差と許容範囲

機械式時計は実際の時間との間にズレが生じますが、毎日同じ秒数の誤差が出るわけではありません。温度・湿度・気圧などが時計内部の金属に影響するため、日によって誤差に幅が出ます。平均日差は、誤差の平均値を1週間〜10日の期間で計算することで分かります。計測するときはゼンマイの巻き具合によっても誤差に差異が生じるため、巻き方を一定にして計測しましょう。

なお、誤差の許容範囲は1日20秒前後です。アンティーク時計の場合、30~60秒ほどでも許容できる範囲です。ブランドやモデルによっても精度は異なるため、一概に「何秒ズレたら故障」とは言えません。

自分の腕時計の平均日差と許容範囲を知っておくと、メンテナンスが必要かを判断する尺度になります。許容範囲を大きく超える場合は、オーバーホールを検討しましょう。

機械式時計の精度に影響が生じる要因

機械式時計は精密に作られており、温度や衝撃といった外部環境に影響を受けやすい複雑な構造をしています。そのため、大切に扱っていても使用環境によっては時間にズレが生じます。精度に影響する外部要因を放っておくと劣化を早めてしまう可能性があるため、適切に対処しましょう。

ここからは、機械式時計の精度に影響する要因について詳しく解説します。

温度差

機械式時計の動力となる歯車などのパーツは金属で作られており、温度変化によって金属が伸び縮みするため、時間にズレが生じます。温度が高いときには金属部品が伸長し、動きが遅くなる一方で、温度が低いときは金属部品が縮小し、動きが速くなりやすいと言われています。

特にアンティーク時計は、温度を補正する機能がないため、温度差の影響を受けやすくなります。夏場は時計の針が遅く、冬場は進みやすくなるのは、気温が時計内部の金属に影響するためです。

ゼンマイの巻き具合

ゼンマイの巻き上げに不足があると、動力エネルギーが時計の部品に行き渡らず、精度に影響が生じます。時計の精度を安定させるには、ゼンマイが十分に巻き上げられている状態で使用しましょう。なお、ゼンマイの巻き上げ不足によって精度に影響が出るのは、手巻き式も自動巻き式も同じです。

手巻き式の場合、巻き上げは1日1回、できれば同じ時刻に行います。ケースサイドにあるリューズをつまんで動かし、抵抗が出るまで巻き上げるのが正しい巻き方です。自動巻き式の場合、1日10時間以上身に着けておくのが理想です。また、自動巻き式の動きが止まっている場合、リューズを30回以上回す、腕を振るといった方法を試すと動き出します。

磁気帯び

機械式時計は、磁気を帯びると精度に影響が出ます。磁気帯びが起こった場合、磁気の発生源から時計を離しても、内部の金属は購入したときの状態に戻りません。専用の機器を用いて「脱磁」を行えば磁気が抜ける可能性もありますが、磁化しやすいアンティーク時計の場合、内部が破損するケースも多い傾向です。

身近な磁気の発生源には、バッグのマグネット部分や、タブレット端末のカバーに付いている磁石があります。また、電気を通す機器からも磁気が発生しているため、時計は電化製品から離して置きましょう。発生源から5cm離せば磁気帯びを防げると言われていますが、なるべく離れた場所に時計を保管しておくと安心です。

油汚れ

時計内部の油は、時計を使い続けているうちに劣化します。機械式時計は、内部の部品をスムーズに動かすため潤滑油を使っています。潤滑油の乾燥が起こるのは、一般的に3~5年ほどです。古い油のままや油切れを起こしたまま使っていると、部品同士の摩擦が生じ、針の遅れや止まりにつながります。

メンテナンスによって洗浄と新しい潤滑油の補充が行われると、油汚れが解消して精度が高まる可能性があります。

メカニカル時計(機械式時計)の修理についてQ&A

姿勢(時計の向き)

時計の部品は重力の影響を受けており、向いている方向によって進み方や遅れ方に違いが出ます。これを「姿勢差誤差」と呼び、同じ規格の時計でも使用する人の生活スタイルによって誤差の幅は異なります。

着用中の姿勢によって生じる誤差は、自力である程度の調整が可能です。時計を外して保管するとき、さまざまな向きで置いてみると、時計の進み・遅れの特徴が分かります。ただし、文字盤やリューズを下にして保管すると、衝撃が加わったときに破損する原因になります。

おすすめの置き方は、時計スタンドを用いて立てておくか、リューズを上にする方法です。自分の時計に生じる誤差の特徴を知り、時計の置き方を工夫してみましょう。

機械式時計を長く使い続けるためのポイント

機械式時計を長く使い続けるためには、いくつか注意するポイントがあります。以下では、機械式時計を扱う上で気を付けたい点を3つに分けて紹介します。

・衝撃を受けやすい場面では時計を外す

機械式時計は構造上、衝撃や振動に弱いという特徴があります。近年では耐久性の高いダイバーズウォッチなどもありますが、多くの時計は落としたりぶつけたりすることを想定していません。機械式時計の魅力である緻密な構造を守るため、衝撃を受けやすい場面では時計を外しましょう。

特に注意したいのは、スポーツを行う場面です。防水性・耐水性がない時計を水辺に持ち込まないのはもちろん、腕を頻繁に動かす競技では注意が必要です。ゴルフ・野球・卓球といったスポーツを行うときに時計を着けたままにしておくと、破損するリスクがあります。

・傷やヒビが入らないよう配慮する

傷・ヒビは、時計内部や文字盤に湿気が入り込んで劣化する原因の1つです。また、繊細なパーツを組み合わせたムーブメントは、細かいホコリでも動作に影響が出ます。小さな傷やヒビから時計に誤作動が起きたケースも少なくありません。

時計を長持ちさせるため、傷やヒビに気づいたときは、なるべく早く専門店で修理してもらいましょう。

・定期的にオーバーホールを行う

専門店で行うオーバーホールは、大切な時計を長持ちさせるために必要なメンテナンスです。オーバーホールは、時計を分解・確認し、部品の状態で洗浄、注油した後に組み立てます。組み立て後は性能検査を行うため、新品のような状態で戻ってきます。

オーバーホールのメリットは、潤滑油の入れ替えを行ってもらえる他、摩耗・破損している部品を修理・交換してもらえることです。オーバーホールを依頼する頻度は3年~5年に1度が目安とされていますが、時計メーカーによって推奨期間が異なります。オーバーホールの頻度についてより詳しく知りたい方は、以下のページをご覧ください。

時計のオーバーホール頻度は?依頼のタイミングや長く使う秘訣も

まとめ

機械式時計は、構造的に1日数秒の誤差が生じます。温度差やゼンマイの巻き具合、磁気帯びといったさまざまな要因で精度に影響が出るため、時計の使い方や保管方法に関しては日常から注意しておくことが大切です。

また、機械式時計は構造上衝撃に弱い作りになっています。激しい運動時や水辺での使用は避け、万が一傷やヒビが入った場合には早めに修理へ出すのがおすすめです。なお、時計の見た目に変化がない場合でも、内部の劣化が進んでいる可能性があります。大切な時計を長く使い続けられるよう、定期的にオーバーホールも行いましょう。


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