時計を長く使い続けるために必要なのが、定期的に業者に依頼して行うオーバーホールです。オーバーホールは時計をすべて分解して行うものであり、相応の費用もかかるため、実際はどの程度の頻度で行えばよいのか分からない方もいるでしょう。
当記事では、オーバーホールの頻度と、オーバーホールを行ったほうがよいタイミングについて解説します。大切な腕時計を長く使えるよう、腕時計のメンテナンスにも気を配るようにしましょう。
オーバーホールを行う頻度の目安は?
オーバーホールとは腕時計のメンテナンス法で、パーツを分解し古くなった油を洗浄した後、動きが悪いパーツの交換・調整をし、再度組み立てて注油・点検を行うことです。お気に入りの時計を長く使い続けるためには、メーカー正規店や民間の時計修理店へ、定期的にオーバーホールを依頼することが重要です。
腕時計のオーバーホールについて解説|必要性と作業工程・費用相場も
いくら丁寧に使っていても、時計内部の潤滑油が時間とともに劣化することは避けられません。オーバーホールをせず時計を使用し続けると、パーツが摩耗してだんだん精度が落ちていき、最終的には動かなくなってしまうこともあります。
時計の種類や使い方によってオーバーホールが必要となる頻度は変わってきますが、一般的にオーバーホールをした方がよいとされている頻度の目安を解説します。
機械式時計の場合
メーカーによっても異なりますが、一般的に推奨されている機械式時計のオーバーホール頻度は3~5年です。全く使用していない腕時計は油が凝固し、早く劣化してしまうため、前回行った時期にかかわらず、早めにオーバーホールを検討しましょう。
機械式時計は大小さまざまなパーツが多数使用しており、パーツ同士が噛み合うことで時間を刻んでいます。パーツの動きをよくする油は時間とともに劣化し、パーツが摩耗したり針の動きが遅くなったりするため、オーバーホールで定期的にメンテナンスする必要があります。
クォーツ式時計の場合
「クォーツ式時計はオーバーホールが不要」という意見もありますが、長く使い続けるには定期的なオーバーホールが必要です。一般的には、クォーツ式時計も4~5年に1度はオーバーホールをした方がいいとされています。
クォーツ式時計は、時刻にズレが生じても電池交換をすれば問題なく動くことが多いため、オーバーホールまではしなくていいと考える方もいます。また、クォーツ式時計は安価なものも多く、高いコストをかけてまでオーバーホールするよりも買い替える方が安く済むという意見もあるでしょう。
しかし、クォーツ式時計も歯車を使用しているため、長く使い続けるには定期的なオーバーホールでのパーツ洗浄・注油が必要です。
こんなときはオーバーホールを依頼するのがおすすめ!
推奨されている頻度はあくまでも一般的なもので、使用状況や環境によってオーバーホールが必要となる基準は異なります。
オーバーホールをせずに使い続けて時計が故障してしまった場合、当然ながら修理が必要です。修理にかかる料金はオーバーホールよりも割高なことに加え、必要なパーツが生産終了していると修理できない場合もあります。
大切な時計を長く使い続けるために、以下に当てはまる場合は推奨されている頻度より早い期間であってもオーバーホールを行うことが賢明です。
時間がずれるとき
時間がずれる理由として、主に以下の3つが挙げられます。
●電池切れ
クォーツ式時計の電池切れが原因であれば電池交換で解決しますが、解決しない場合や機械式時計の場合はほかの原因を探る必要があります。
●油切れ・パーツの摩耗・破損
中の部品が落下や強い衝撃で破損したり、油切れによってパーツが摩耗したりしていると時間がずれてしまいます。どの部品が損傷しているのかは詳しく調べないと分からない場合もありますが、修理・注油を行うことで解決します。
●磁気帯び
PCや電子レンジなどの電子機器による強い磁気がパーツに影響を与え、時間をずらしている可能性があります。オーバーホールを行うことで磁気を除去できます。
時計から異音がするとき
時計内部から「カタカタ」とパーツが転がるような音や、「ギリギリ」と金属が擦れるような音がする場合は、中心部にあるローターというパーツが破損している可能性があります。重量のあるローターが破損したままだと時計が正常に機能しないだけでなく、他のパーツを傷付けてしまい、被害が広がる恐れもあります。
破損しているパーツを交換し、内部機械に油を差すことで改善する場合があるため、異音がしたら速やかにオーバーホールを行ってください。
ガラスが曇るようになったとき
ガラスにヒビが入っていたり、パッキンが劣化したりすると内部に水が浸入してしまいます。水中でリューズを操作した場合も隙間から水が浸入してしまうため、防水機能がある時計でも注意が必要です。
ほかにも外部との温度差で結露が発生するなど、何らかの原因でガラス内部に水分が浸入してしまうとパーツが錆びてしまい、故障の原因となります。
内部に水が入っているときや、時計が曇るようになったときはオーバーホールを行い、ガラスやパッキン、錆びてしまった金属パーツなどを交換しましょう。
長期間使っていなかった時計を使うとき
長期間使っていない時計は、内部の油が凝固して各パーツの動きが悪くなっていることがあります。オーバーホールをしないままで動かすと、摩擦により内部のパーツが摩耗することもあるため、使用前にオーバーホールを行っておくと安心です。
また、クォーツ式時計は内蔵されている電池の液漏れの危険性があるため、長期間使用しない場合は電池を取り外しておきましょう。
時計を長く使い続けるためには?
大切な人からの贈り物や自分へのご褒美などで高級ブランド時計を手にし、「一生使い続けたい」と考える方も多いでしょう。しかし、時計は精密機械であり、メンテナンスをしないといつかは故障してしまいます。
大事な時計を長く使うには、普段身につけたり保管したりする際にも気を付けたいポイントがあります。信頼できる修理業者を見つけて定期的にオーバーホールを依頼する以外にも、普段の扱い方や保管方法に気を付けると、最小限のコストでよい状態を長く保つことが可能です。
日々のお手入れをする
使用した後は、ケースにしまう前に柔らかいクロスで本体部分やベルトの汚れを拭き取りましょう。1日中身につけていた時計には汗や皮脂などが付着しているため、放置してしまうと金属部分の錆びの原因となります。落ちにくい汚れは湿らせたクロスで拭き取ることで綺麗になります。
ベルト部分の素材が革の場合は、濡らさないように気をつけ、専用のクリームを塗ってから拭くと、汚れが取れるだけでなく美しいツヤが出るためおすすめです。また、何本かベルトの替えを持っておくと、ベルトを休ませることができ、時計を長く使えるようになります。
時計は丁寧に扱う
時計は衝撃や振動に弱く、表面には問題がなくても内部でパーツが破損したり故障したりすることがあります。スポーツやバイクの運転をするときなど、強い衝撃がかかる危険がある際は外しましょう。
また、防水機能付きであってもパーツの小さな破損部分やリューズの隙間から水が浸入する恐れがあるため、お風呂やシャワーの際も外すことをおすすめします。
さらに注意すべきなのは家電やスマートフォンです。身近な家電やスマートフォン、PCから発せられる強い磁気は、時計内部の精密なパーツに影響をきたし狂わせてしまう可能性があるため、近づけないようにしましょう。
保管場所に注意する
腕時計は、落下や衝撃などの恐れのない安全な場所に保管することが大切です。保管する場所を決めて専用のケースを用意しておくと、忙しい朝に探し回ったりつけ忘れたりする心配もありません。また、どこにしまったか忘れる心配もなく、長期間放置してしまうリスクも抑えられます。
時計をよりよい状態で保管するためには、保管場所の環境も重要です。高温多湿を避けた風通しのよい場所にし、埃をかぶったり、湿気で革のベルトがカビたりなどしないように気を付けましょう。
まとめ
時計は定期的にオーバーホールし、内部部品を点検・整備することが大切です。機械式の時計は3~5年に1度、クォーツ式時計でも4~5年に1度はオーバーホールを行うようにしましょう。また、それほど時間が経っていなくても、時計から異音がしたり、時間がずれたりするときは、オーバーホールを依頼し点検しましょう。
時計は精密機械であり、衝撃や磁気に弱い性質を持っています。大切な時計を長く使い続けるためにも、保管場所に気をつけ、定期的なメンテナンスを行うよう心がけましょう。