多くの腕時計には、本体に「リューズ」と呼ばれる突起がついています。リューズは時刻合わせやカレンダー調整を行う役割を担っており、腕時計の中でも重要なパーツです。リューズは繊細なパーツであり、扱い方によっては故障の原因となるため注意が必要です。
今回は、腕時計についているリューズの種類や役割、取り扱うときの注意点を詳しく解説します。リューズについて詳しく知りたい方や、腕時計を大事に使い続けたい方はぜひご一読ください。
腕時計のリューズとは
リューズとは、時計の側面にある小さな突起のことを言います。一般的に、腕時計は左手に装着することを前提に作られており、右手で操作しやすいよう、ケースの右側にリューズが配置されています。ただし、大径の時計の場合は、手首にリューズが当たらないように左側に位置していることが多い傾向です。
リューズは「竜頭」と表記する日本の時計用語で、中国神話の怪物「蒲牢(ほろう)」に由来します。蒲牢はよく吠えたため、中国の梵鐘(ぼんしょう)には「遠くまで響くように」という願いを込めて、釣鐘に蒲牢の装飾が施されているのが特徴です。
時計の突起をリューズと名づけたのは、懐中時計の紐を通す部分と釣鐘の綱を通す部分の形状が似ていることに起因します。中国から日本のお寺に梵鐘が伝わる際、装飾としてあしらわれていた蒲牢の姿が竜に似ているため、「竜頭」と呼ばれるようになったと言われています。
リューズの種類
リューズには「引き出し式」と「ねじ込み式」があり、仕組みは大きく変わらないものの、取り扱い方法は異なります。
・引き出し式
リューズをつまんで引き出すだけで、カレンダーや日付の操作が可能なタイプです。電池式の時計やシンプルな機械式時計をはじめ、ほとんどの時計で採用されています。
・ねじ込み式
ねじ込み式はリューズが時計内部にねじ込まれているため、ネジを緩めるように回転させて引き出す必要があります。水やほこりが隙間から侵入するのを防ぐ仕様になっており、防水性や気密性が高いのも特徴です。ねじ込み式のリューズは、ダイバーズウォッチや高級腕時計に多く採用されています。
引き出し式のつもりでリューズをつまんでも固くて動かない場合、ねじ込み式だったというケースもあります。腕時計のリューズを操作する際は、リューズのタイプを事前に確認しておきましょう。
腕時計におけるリューズの役割
リューズは、腕時計において重要な部品の1つです。主に、以下の3つの役割があります。
ゼンマイを巻く |
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機械式の時計は、定期的にゼンマイを巻き上げる必要があります。手動で巻き上げる場合は、リューズが突き出ていない状態で右回りに回すのが一般的です。 巻き上げる回数の目安は40〜50回程度で、正常に作動していると「ジージー」という音が聞こえます。なお、自動巻き上げ式の時計でも、必要に応じて手動で巻き上げることが可能です。 |
カレンダーの日付を合わせる |
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腕時計のカレンダーは、リューズを1段階引き出すことで調整が可能です。カレンダー機能のないモデルでは、1段階引き出すと時刻設定ができる仕様になっています。ほとんどの腕時計はリューズを右に回すと日付や曜日が変わるものの、モデルによっては左に回すタイプも存在します。 |
時刻を合わせる |
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時間がずれた場合や海外旅行の際に時差がある場合などは、時刻合わせをする必要があります。多くの腕時計では、リューズを最大限引き出した状態で右に回すと長針が動きます。針を進めて、正しい時刻にセットすることで時刻合わせが可能です。 なお、機械式時計だけでなく、電池で動くクォーツ時計も同様の操作で時刻を設定できます。時刻合わせが必要なシチュエーションに備えて、あらかじめリューズの使い方を確認しておくと安心です。 |
リューズの役割は腕時計の種類にかかわらず共通していますが、操作方法はメーカーやモデルによって異なります。誤操作による故障やトラブルを回避するためにも、事前に取扱説明書を確認しておきましょう。
腕時計のリューズを取り扱うときの注意点
リューズは腕時計の中でも繊細なパーツで、使用頻度が高いのが特徴です。リューズは経年劣化によって自然と不具合が起こりやすくなるものの、丁寧に扱えば故障のリスクを減らせます。以下では、腕時計のリューズを取り扱うときの注意点を解説します。
日付変更禁止時間にリューズを操作しない
カレンダー機能付きの腕時計では、日付を変更する時間に注意が必要です。腕時計は深夜0時前後になると日付が自動的に変わる仕組みになっているものの、時間帯によってはリューズを操作することで「日送り車」と呼ばれる歯車の破損が懸念されます。
多くの腕時計は、20時から翌日の4時までが日付変更禁止時間帯に設定されています。故障するリスクを考えると、日付変更禁止時間帯にカレンダーの調整は控えたほうが無難です。近年では、時間を問わずカレンダー操作ができるモデルも販売されています。頻繁に日付を変更する必要がある場合は、日付変更時間帯の設定されていないモデルの購入をおすすめします。
正しい方向に回転させる
リューズを回す方向には決まりがあるため、操作する際は正しい方向に回すことが大切です。機械式時計の歯車は同一方向に回る性質があり、逆回転させると内部のパーツに大きな負担がかかります。歯車や周辺部品の故障の原因となる可能性もあるので、リューズを回す方向には注意が必要です。
リューズの操作方法はメーカーやモデルによって異なるものの、一般的には右回りです。ただし、左回転に設計されているものや、逆回転させても問題のない時計も存在します。腕時計のリューズをどの方向に回せばよいか分からない場合は、説明書を確認するか、メーカーや時計専門店に問い合わせましょう。
ゼンマイを巻きすぎない
機械式時計にとって、ゼンマイは時計を動かす原動力となる重要な部品です。ゼンマイはリューズの回転によって巻き上げるものの、ストッパーである「巻き止まり」を超えてしまうと故障する恐れがあります。ゼンマイを巻き上げている途中で、重く感じる感触があった場合は操作を止めましょう。
ゼンマイを巻く際は、巻き止まりまでの回数を覚えておけば、巻きすぎのリスクを軽減できます。ゼンマイは消耗品であり、経年劣化で切れるのは自然な現象です。そのため、定期的にオーバーホールをしておくと安心して使用できます。
リューズの故障原因と対処法
リューズの不具合を放置することは、腕時計全体の故障につながる恐れもあります。以下では、腕時計全体のトラブルを回避できるよう、リューズの主な故障原因と対処法を解説します。
リューズが重くて回しにくい
リューズが重くて回しにくい場合は、周辺部品の不具合が影響している可能性があります。周辺部品の不具合の原因は、湿気や水分による腐食や錆、パッキンの劣化などが考えらます。リューズを回転させる際に重く感じたり、引き出しにくかったりする場合は、無理に回さないようにしましょう。
リューズの動きに違和感がある場合は、メーカーや時計修理店への相談をおすすめします。オーバーホールを依頼すれば、プロによる分解掃除や部品の交換が可能です。
リューズが本体から外れてしまった
腕時計本体からリューズが外れてしまうトラブルの原因は、オシドリや巻き芯のトラブル、ネジの緩みなど多岐にわたります。
オシドリはリューズをロックする役割があり、リューズの引き上げや引き下げを行う度に負担がかかります。巻き芯はリューズと時計内部をつなぐ金属の棒で、摩耗やサビによって破損することもある部品です。巻き芯の溝にはオシドリの先端が噛み合っているため、腕時計を使い続けることによる金属疲労や摩耗によってもリューズが外れやすくなります。
リューズが抜けた場合、自分で戻そうとするのは危険です。操作に失敗すると故障の原因となるため、修理はプロに依頼するのがおすすめです。また、修理の際に部品がないと追加料金がかかる可能性もあるため、部品を紛失しないように注意しましょう。
まとめ
リューズは腕時計本体の側面についている部品で、カレンダー調整や時刻合わせ、ゼンマイの巻き上げなどの役割があります。さまざまな役割を担うリューズは、腕時計の部品の中でも非常に繊細な部品のため取扱いには十分注意しましょう。
リューズを操作する際は、操作する時間帯や回転させる方向、ゼンマイの巻きすぎに注意することで故障のリスクを減らせます。リューズを含む腕時計の部品は消耗品のため、定期的にオーバーホールを行って良好な状態を保っておくことが大切です。