お気に入りの時計は長く大切に使いたいものですが、やはり経年によってあちこちに不具合が出るのは仕方がありません。特にベルトは時計の中でも壊れやすいパーツに当たるため、交換を考える機会も多いでしょう。腕時計ベルトは、「どの素材を選ぶか」「どのようなデザインを選ぶか」によって、同じ時計でも与える印象を大きく変化させるアイテムです。
当記事では時計ベルトの主な種類4つとその特徴、ベルトを交換する方法・注意点を解説するため、ぜひ参考にしてください。
時計のベルトにはどのような種類がある?
時計で交換できるベルトは定番のものから一風変わったものまで、素材・デザインともに多種多様です。どのベルトを選ぶかで時計の表情が変化するため、傷んでからの交換だけでなく、複数本をストックしてアレンジを楽しむのもよいでしょう。
ここでは時計ベルトの主な種類4つと、それぞれどのような特徴があるかを解説します。
金属ベルト
金属ベルト(メタルベルト)は、多くの時計で採用されている比較的ポピュラーなベルトです。耐久性が高く、適切な手入れを行っていれば半永久的に使用できます。金属ベルトは素材だけでなくコマの大きさや形、数によって与える印象が大きく変化することが特徴です。
金属ベルトの代表的な種類には、次のようなものがあります。
- ステンレス
- チタン
- ゴールド
下記は、金属ベルトのメリット・デメリットです。
【メリット】
- 汗や水に濡れても傷みにくい
- 汚れが目立ちにくい
- 手入れがしやすい
- 耐久性が高い
【デメリット】
- 重量がある
- 傷が付きやすい
- 価格が高め
- 金属アレルギーの人は使えない
革ベルト
どちらかというとフォーマルな印象を与える革ベルトは、クラシックな時計との相性がよい素材です。素材のバリエーションが多く、色合いによってはカジュアル寄りの印象を与えることもできます。着け心地の軽さと使い込むほどに味わい深くなる色みも魅力と言えるでしょう。
下記は、革ベルトの代表的な種類です。
- 牛革
- 豚革
- 馬革
- トカゲ革
- カンガルー革
- サメ革
下記は、革ベルトの主なメリット・デメリットです。
【メリット】
- フィット感に優れている
- 高級感がある
- 疲れにくい
- 種類の選択肢が多い
- 交換しやすい
- 金属に比べると価格が安め
【デメリット】
- 汗や水に弱い
- 変色しやすい
- 小まめに手入れしないと傷む
ナイロンベルト
ナイロンベルトはファッション性の高さと手軽さで人気があります。耐水加工されたナイロン繊維からできており、水や汚れに強く非常に軽いことが特徴です。カジュアルな印象が強くフォーマルな場にはあまり向きませんが、スポーツ用や普段使いとしてはうってつけの素材と言えるでしょう。
下記は、ナイロンベルトの主なメリット・デメリットです。
【メリット】
- 汗や水に強い
- 引っ張りや摩擦に強く傷みにくい
- 伸縮性が低く型崩れしにくい
- 普通の洗剤で簡単に洗える
- ファッション性が高い
- 比較的安価なものが多い
【デメリット】
- 高級感は薄れる
- デザインによっては安っぽく見える
ラバーベルト
ラバーベルトは、ウレタンやシリコンなどの合成・天然ゴムの素材でできています。水や汚れを気にする必要がないため、スポーツ用やアウトドア用のベルトとして人気です。シンプルで落ち着いたデザインの商品も多いものの、カジュアルな印象に寄りやすく、利用シーンを選ぶ素材でもあります。
下記は、ラバーベルトの主なメリット・デメリットです。
【メリット】
- 汗や水、衝撃に強い
- ニオイや汚れが染み付きにくい
- 普通の洗剤で簡単に洗える
- 軽くて柔らかく、着け心地がよい
- 手頃な値段が多い
【デメリット】
- 通気性が悪い
- においが気になるものもある
- 紫外線や経年で劣化する
- 傷の修復が難しい
時計ベルトの交換方法
時計の中には、簡単にベルト交換できるものも少なくありません。作業が簡単なタイプなら、必要な道具をそろえ、手順さえ理解すれば、初心者でも短時間で交換が可能です。自分で交換できれば服のように毎日付け替えることもできるため、ベルトの交換方法を覚えておくとおしゃれの幅が広がるでしょう。
ここでは、自分でベルト交換を行うときの方法を解説します。
必要な道具を用意する
まずは、時計ベルトの交換作業に必要な道具を準備しましょう。ベルト交換には、最低でも下記の道具が必要です。
- 交換用ベルト
- バネ棒外し
バネ棒外しは、時計のケースとベルトを留めている「バネ棒」を外すための専用工具です。バネ棒には両端にバネが内蔵されており、バネ部分を押して縮ませることで狭いところを通過させ、離して伸ばすことで固定します。バネ式突っ張り棒の小型版を想像すれば分かりやすいでしょう。他にも、下記の道具があると便利です。
- バネ棒をつまむピンセット
- 差込口周辺を保護するセロハンテープ
- 下に敷いてバネ棒の紛失を防ぐ大きめの紙
バネ棒を外す
バネ棒の取り外し方法はバネ棒外しの差込口があるかないかで異なるため、まずは時計本体とベルトが固定されている部分の穴が貫通しているかを確認しましょう。作業中は竜頭(リューズ)が付いているほうを上側にすると、時計が安定します。
【差込口がある場合】
STEP1 | バネ棒外しのI字型側を、差込口に押し込む |
---|---|
STEP2 | バネ棒外しを押し込んだまま、ベルトをずらす |
STEP3 | バネ棒をベルトから取り外す |
STEP4 | もう片方も同じように取り外す |
【差込口がない場合】
STEP1 | バネ棒外しのY字型側を、ベルトとラグ(※)の間に差し込む |
---|---|
STEP2 | バネ棒の溝にバネ棒外しを引っかけて押し下げる |
STEP3 | バネ棒外しを押し下げたまま、ベルトをずらす |
STEP4 | バネ棒をベルトから取り外す |
STEP5 | もう片方も同じように取り外す |
※ラグ:バネ棒外しが固定されている部分のこと
なお、バネ棒外しに込めた力を一気に緩めると、バネ棒が勢いよく飛び出す恐れがあるため注意しましょう。ラグ周辺をセロハンテープで保護しておくと、バネ棒が飛び出したり、ケースが傷ついたりするリスクを低減できます。
ベルトを交換してバネ棒を取り付ける
古いベルトを外したら、下記の手順で新しいベルトを取り付けます。取り付け方法は、差込口の有無による違いはありません。
STEP1 | 新しいベルトにバネ棒を通す |
---|---|
STEP2 | バネ棒の片側を時計の差込口に内側から入れる |
STEP3 | 反対側の溝にバネ棒外しのY字型側を引っかけて押し下げ、ラグとの間にずらし入れる |
STEP4 | 差込口の下で力を緩め、カチリと嵌った音がするのを確認する |
STEP5 | もう片方も同じように取り付ける |
STEP6 | ベルトを引っ張って両側とも時計ケースから外れないか確認する |
以上でベルトの交換作業は完了です。
自分で時計ベルトを交換するときの注意点は?
時計ベルトの交換はそう難しい作業ではありませんが、自分で行う場合は下記のポイントに注意しましょう。
交換できないベルトもある |
---|
時計のモデルによっては、ベルトの交換ができない・難しいタイプもあります。特に金属バンドは専用バンドへの交換のみ可能で、既製バンドへは対応していないタイプも珍しくありません。また、ベルトとケースが溶接されていたり完全に一体化していたりするタイプは、基本的に交換・取り外しは不可能です。 |
ベルトの向きを間違えない |
---|
ベルトの交換作業していると、ついバネ棒周辺にばかり意識が向いてしまいやすくなります。よくあるのが、ベルトの裏表を間違える・上下を逆にするといったミスです。間違えてももう一度作業し直せばリカバリできますが、ベルト交換には傷を増やしてしまう恐れもあるため、交換頻度が少なくて済むよう、初めにしっかりと確認しましょう。 |
不安な際は時計修理専門店に依頼する |
---|
バネ棒は小さな部品で紛失しやすい上、バネの反動でラグ周辺を傷付けてしまう可能性もあります。また、時計によって適切なベルトの幅は異なるため、適切なベルトを選ばないと、ものによっては時計の魅力を半減させかねません。 大切な時計を傷付けるリスクを減らしつつ、時計にあったベルトへ交換したい場合は専門店へ依頼しましょう。熟練の技術者による確かな作業が望め、時計のデザインや利用シーンに合わせた適切なベルトの選び方もアドバイスしてもらえます。 |
まとめ
時計のベルトは、必要な道具をそろえて手順を理解していれば、自分自身でも比較的簡単に交換することができます。慣れれば短時間で付け替えられるため、気分によって交換するのも楽しいかもしれません。
ただし、ブランドやモデルによっては専用のベルトや道具を必要とするものや、そもそも交換が不可能なものもあります。また、ベルトによっては時計の印象を損ねる場合もあるため、よく分からない・不安な場合は無理に手を出さず、時計修理専門店に依頼したほうがよいでしょう。